
この記事では、上記の質問にお答えします。

本記事の内容
- 『老人と海』読む前に
- 『老人と海』あらすじ
- 『老人と海』感想
- 『老人と海』まとめ
『老人と海』をザックリ言うと…
孤独な老人心理を追体験できる小説…。サンチャゴという老いた漁師が、大物の巨大カジキを釣り上げることにリベンジします。かつて老人は優秀な漁師でしたが、いまは「落ちぶれ者」としてのレッテルを貼られています。そこで、老人は「独りで漁に出る」というプライドをかけた行動を取ります。著者のヘミングウェイは、その行動の中に「老い」に対する普遍的なメッセージをハードボイルドなタッチで描きます。
という感じです。
科学が「老化」を生物学的に証明するなら、文学は「老い」を物語で表現します。
『老人と海』は高い評価を受け、ノーベル文学賞のきっかけにもなった作品です。
凡人には思いつかない発想や世界観がイマジネーションをかき立ててくれるはず。150ページの短編作品、ボリュームも少なめですから、あっという間に読めますよ。
『老人と海』には、日常生活ではなかなか触れることのできない、優れたセリフや言語表現がつまっています。個々の言葉の蓄積は、比喩の総体として、あなた自身の「老い」のイメージを変化させてくれるはず。
人生100年時代。
もし、あなたが老いて、あるいは病気をわずらって「死」を身近に感じておられるなら、ヘミングウェイの表現を通して、感情に見合う言葉を「発見」できるかもしれません
小説を読み終えるころには、きっと、あなたが目にする「老人」の見え方が変わるでしょう。
内容をサクッと知りたい方は「読む前に」と「あらすじ」だけを読めばオッケーです。作品の基本情報や前提知識がチェック出来たら、ぜひ原書を読んで下さい。
それでは、行ってみましょう。
『老人と海』読む前に
ちょっと難しく感じる作品(特に外国の古典作品)を読む場合、原書を直接読む前に、ある程度の予備知識を持っておくことが重要です。
優れた文学作品とはいえ、国や時代が異なれば物語の内容をすぐにイメージ出来ない場合があります。その理由は、読者の頭の中に、作品の時代背景や常識といった基本情報、前提知識が不足しているからです。
この記事では、作品の基本情報、著者の略歴、時代背景などを簡潔にお伝えします。
ちなみに、書籍という文章コンテンツが読みにくい場合、オーディオブックや映画など、その他の関連コンテンツに触れることもおすすめです。
基本情報
作品名 | 『老人と海』 |
著者 | アーネスト・ヘミングウェイ(1899ー1961)享年62歳 |
出版国 | アメリカ合衆国 |
出版年 | 1952年(日本は昭和27年) |
執筆時の年齢 | 53歳 |
分量 | 約150ページ(中編小説) |
ジャンル | 純文学系 |
電子書籍 | ○:Kindle |
オーディオブック | × |
関連コンテンツ | ○:映画 |
同世代の作家/代表作 | F・スコット・フィッツジェラルド(1896〜1940:執筆時は死去)/『グレード・ギャッツビー』(1925) ウイリアム・フォークナー(1897〜1962:執筆時は55歳)/『響きと怒り』(1929)、『アブサロム、アブサロム!』(1936)など |
時代背景
『老人と海』が発刊されたのは、1952年です。
この頃の時代は、第2次世界大戦後における冷戦構造の最中、朝鮮戦争(1950〜1953年)が勃発した時期
このような社会状況で『老人と海』は、人々に読まれました。
著者の略歴
著者のアーネスト・ヘミングウェイ(1899ー1961:享年62歳)は、アメリカの小説家です。
『老人と海』は、ヘミングウェイが53歳のときに刊行されます。
大部分の作品を1920年代中期から1950年代中期に書き上げます。代表作に『日はまだ昇る』『武器よさらば』など。
本記事で紹介している『老人と海』が高い評価を受け、1954年ノーベル文学賞を受賞。
ところが、同年の飛行機事故から精神的疾患を患う。1961年にショットガンで自殺をして生涯を終えます。

『老人と海』あらすじ
作品を楽しむために必要なあらすじは、
- 商品レビュー
- 舞台設定(時代・場所)
- 登場人物(関係性)
の3つくらいです。
その他、作品独自のルールやテーマなどがあればおさえておきます。
商品レビュー
八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが──。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。
引用:Amazon(商品説明より)
商品レビューは、コスパの高い文章です。本を売るために書かれた文章だから、ムダが少ないです。
読者の興味を引くように端的にまとめられています。
商品レビューは、あらすじの「超概要」です。
舞台設定(時代・場所)
・時代:1940〜50年頃
・場所:メキシコ湾(キューバの港町コヒマル)
ちょっとしたことですが、作品のロケーションを地図上でイメージしておくと便利です。
キューバ諸島が望めるメキシコ湾。『老人と海』が出版されたのは、第2次世界大戦の終わった冷戦時代です。
ヘミングウェイの目には、緊張感の漂うメキシコの海は、どのように写ったのでしょうか。
ヘミングウェイは、自らの視線の先に見える世界を『老人と海』のサンチャゴ老人に語らせたのかもしれません。
登場人物(関係性)
チェックすべき主要メンバーです。
・老人(サンチャゴという名前の漁師)
・少年(マノーリンという名前の漁師)
サンチャゴ老人は、かつて腕の良い漁師でしたが、最近では腕も落ち、周りの漁師からは「落ちぶれた存在」として見られていました。
しかし、ある少年だけは違いました。マノリーン少年です。少年の両親でさえ、老人のことは見限っており、少年が老人と共に出港することを禁止していました。
排他的な状態にいる中、かつての栄光を取り戻すように、老人は独り、海に出ます。そこに待ち受けていたものは、単なる「獲物」ではなく、自己との精神的な格闘、とも言うべきものでした。
『老人と海』の読書中、相関図をチラ見することをおすすめします。その都度、物語の大前提に立ち戻ることで、物語の細部を楽しむ余裕が出てきます。
また、オーディオブックで作品を楽しむ場合にも、この相関図は重宝します。オーディオブックは「返り読み」には不向きであるため、前提条件や設定を振り返るときにお役立て下さい。
『老人と海』感想
ここからは、引用を絡めた個人的な感想です。
老人はコーヒーをゆっくり飲んだ。これが一日の全食料だ。それを飲まなければならないことを、かれは知っている。もう長いこと、かれは食べるのが面倒になっていた。
『老人と海』(新潮文庫)福田恆存[訳](P27)
ここは物語の冒頭。老人がカジキを釣りに行く前の場面。
「食事が面倒」というメンタリティは要注意ですね。ゆるやかな自殺行為。老人の活力の低さが象徴的です。
コーヒーというゼロカロリーの液体を体内に流し込み、日々を過ごしています。
「けれど、人間は負けるように造られてはいないんだ」とかれは声に出して言った。
「そりゃ、人間は殺されるかもしれない、けれど負けはしないんだぞ」。
『老人と海』(新潮文庫)福田恆存[訳](P142)
この引用部は、いっきに後半部分です。
巨大カジキとの格闘の末に語った言葉です。老人は、ひとりの人間として出港し、海と向き合いました。
その結果、老人は「肉体的な死」と「精神的な死」を分けることに成功したのかもしれません。
「起きあがらないほうがいいよ」と少年がいった。「これをお飲み」コップにコーヒーをついでやった。老人はそれを受けとって飲んだ。
『老人と海』(新潮文庫)福田恆存[訳](P142)
船旅から帰宅し、消耗しきった老人。
小屋の中で、体力の限界と精神の無限を感じながら老人は何を思ったのでしょうか。
少年は、そのような老人にコーヒーを差し入れます。極めて個人的な感想ですが、物語冒頭のコーヒーと物語後半部のコーヒーがリンクします。
『老人と海』まとめ
最後に、本記事の内容、
- 『老人と海』読む前に
- 『老人と海』あらすじ
- 『老人と海』感想
の3つをサクッと振り返ります。
まとめ①_読む前に
原著(翻訳本)を直接読む前に、少しの予備知識があるだけで十分楽しめます。優れた文学作品とはいえ、国や時代が異なると、物語の内容をすぐにイメージ出来ない場合があります。
その理由は、読者の頭の中に、読者の頭の中に、作品の時代背景や常識といった基本情報、前提知識が不足しているからです。
書籍という文章コンテンツが読みにくい場合、オーディオブックや映画など、その他の関連コンテンツに触れることもおすすめです。
作品名 | 『老人と海』 |
著者 | アーネスト・ヘミングウェイ(1899ー1961)享年62歳 |
出版国 | アメリカ合衆国 |
出版年 | 1952年(日本は昭和27年) |
執筆時の年齢 | 53歳 |
分量 | 約150ページ(中編小説) |
ジャンル | 純文学系 |
電子書籍 | ○:Kindle |
オーディオブック | × |
関連コンテンツ(映像) | ○:映画 |
まとめ②_あらすじ
・商品レビュー
八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが──。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。
引用:Amazon(商品説明より)
・舞台設定(時代・場所)
時代:1940〜50年頃
場所:メキシコ湾(キューバの港町コヒマル)
・登場人物(相関関係:図参照)
・老人(サンチャゴという名前の漁師)
・少年(マノーリンという名前の漁師)
まとめ③_感想
「けれど、人間は負けるように造られてはいないんだ」とかれは声に出して言った。
「そりゃ、人間は殺されるかもしれない、けれど負けはしないんだぞ」。
『老人と海』(新潮文庫)福田恆存[訳](P142
人生100年時代。
長寿遺伝子サーチュインなど、「老化」に対する科学的研究は要注目です。
今後も、その研究成果に対して、和たちは真摯に目を向けていく必要があります。
一方で、現時点で人間は「老い」と「死」そのものから逃れることはできません。
そして、「老い」や「死」の実態をうまく言葉にできない、という事実があるのも確かなこと。
『老人と海』を読むことで、ヘミングウェイの視点を借りて「老い」や「死」のあり方を、捉えなおせるかもです。
もちろん、感想は人それぞれです。
本記事は、作品を読む際のコンパスのようなものです。ひとつの読み方として、作品の前提知識や基本情報をおさえた上で、読書することをおすすめします。
方向性が決まれば、それぞれの目的で『 』を楽しんで下さい。
